号外:カネカ、生分解プラスティックの海洋分解の認証を取得

ポリエステル繊維等の合成繊維はプラスティックのひとつの加工形態です。プラスティックは比較的安価で、成形性に優れ、物性も安定している優れた材料で、私たちの生活に幅広く使用されています。その一方で、物性が安定しているがゆえに、自然環境下では分解されず、廃プラスティックが大きな環境問題になっています。マイクロプラスティックの海洋汚染も、廃プラスティック問題の一部です。この廃プラスティック問題を軽減させる方法として生分解性プラスティックの開発が進められています。繊維化できるかどうかは別として、少しでも廃プラスティック問題を軽減する(サステイナビリティ)ための大切な試みです。

2017年11月15日の(株)カネカのニュースリリースより。

“カネカは、2017年9月に開発商品のポリエステル系生分解性プラスティック(商品名:カネカPHBH)で、海水中で生分解するとの認証「OK Biodegradable MARINE」を取得しました。

*海水中(30℃)で、生分解度が6か月以内に90%になること。

PHBHは当社が開発した生分解性に優れた100%植物由来のバイオプラスティックであり、現在欧州地域のプラスティック袋用途を中心に市場開拓を進めています。今回、海水中でのPHBHの生分解性が認められたことから、当社は海洋への投棄・流出の多い漁具・釣り具や浮き、その他海洋資材への用途開拓に取り組んでゆきます。“

カネカの生分解性バイオマスプラスティック(概念図)

PHBHは、微生物が植物油を摂取し、ポリマーとして体内に蓄えたものを取り出し、有機溶媒を使わないプロセスで製品化した植物由来生分解性プラスティックです。

<PHBHの特徴>

*100%植物由来(植物油を原料とする)

*微生物を培養して生産

*微生物によって生分解(堆肥化好気性生分解、バイオガス化嫌気性生分解、海水中生分解)

2019年10月11日の(株)カネカのニュースリリースより。

“PHBHは、米国食品医薬品局(FDA)、ポリオレフィン等衛生協議会、欧州委員会のポジティブリストに掲載され、全食品接触用途で使用可能となりました。欧州では果物・野菜袋やコンポスト(生ごみなどの有機物を部生物の働きで分解させて堆肥にする処理方法)袋向けの販売が増加し、国内では、コンビニエンスストアや化粧品メーカーなど大手顧客において、ストローやレジ袋、包装材など幅広い用途で採用が進んでいます。当社は今後のさらなる需要拡大に向けて、PHBHの製造設備(高砂工業所)の生産能力を年間1,000tから5,000tに増強する工事を進めており、2019年12月の稼働を予定しています。”

PHBHは有限な化石原料を使用しない100%植物由来の生分解性プラスティックです。カーボンニュートラルであり、炭素循環型のサステイナブルな素材です。海水中生分解性がありますから、マイクロプラスティックの海洋汚染軽減にも有効です。しかし、海洋に流出することを前提にするのではなく、回収システムを構築してできるだけ回収し、生分解処理することで(焼却せずに)CO2の排出を抑制し、地球温暖化の軽減につなげてゆくべきだと思います。

私が入手した情報の範囲では、プラスティックとしての物性などの情報はありませんでした。耐久性や耐熱性などの物性によっては使用可能な用途に制限があるかもしれません。衣料用の繊維化ができるかどうかの記載もありませんでした。(ということは難しいのかな・・・)2019年に製造能力を増強するとのことですが、増強後のコストがどの程度なのかも、今後の普及に大きく影響すると思われます。

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