専ら物の収集運搬と処分
みなさんは「専ら物」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。「専ら物」とは、新聞などの古紙、古着などの古繊維、アルミ缶などの古銅を含む鉄屑、空き瓶類の4品目を指す廃棄物のことです。「専ら物」であれば、一般廃棄物(家庭からの排出)であれ、産業廃棄物(企業からの排出)であれ、その収集運搬と処分のための許可が不要で、廃棄物処理法の例外とされています。
<使用後衣料品の回収:リサイクルする前に>の項参照
「専ら物」の正式名称は「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物または一般廃棄物」です。「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法、廃掃法)では、一般廃棄物にしろ、産業廃棄物にしろ、「専ら物」以外の廃棄物の収集運搬と処理については、対象となる地域の市町村長の許可を受けなければならないと定められています。
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」は昭和45年に施行され、廃棄物の回収運搬と処理は許可制になりました。しかし「専ら物」については、この法律ができる前から資源回収・再生利用の対象となっていて、既存の専業回収業者やリサイクル業者といった流通経路が成立していました。このため行政は、既存の流通経路を例外として認めて活用することにしました。
その後、“廃棄物処理法施行以降の新規参入や兼業の回収業者は「専ら物」の許可不要制度の適用外か”という議論があり、また自治体ごとに見解のばらつきが見られるようになりました。このため平成20年3月31日の閣議決定によって以下のような見解が確認されました。
<使用済み衣料品・繊維等のリサイクルに関わる店頭回収・運搬・処分について(H20年度措置)>
“複数の企業が環境への取り組みとして、衣料品をはじめとする古繊維のリサイクルのために店頭回収を試みている。しかし、回収した古繊維の取扱いに関して地方公共団体の見解にばらつきがあるため、全国展開できないという問題が発生しており、古繊維の回収が進まないという指摘がある。したがって、古繊維は、廃棄物処理法に定めのある「専ら再生利用目的となる廃棄物(いわゆる専ら物)」に当たる場合、収集運搬及び処分業の許可は不要であり、例えば衣類の販売等、ほかの業を主として行っていても、同様に業の許可は不要であることを周知する。”
この閣議決定によって、新規参入・兼業の回収業者でも専ら物を取り扱えることが確認されました。また「専ら物」の取り扱いについては、廃棄物として「専ら物」を料金をもらって回収した場合でも、各種許可は不要であり、産業廃棄物の場合もマニュフェストが不要であることが認められています。一部のアパレル企業が店頭で自社製品の回収を実施しているのも、この「専ら物」の取り扱い特例を利用したものです。
「専ら物」の取り扱いについて各種許可は不要であり、マニュフェストも必要ありませんが、下記の2点は遵守しなければなりません。
①処分方法は「マテリアルリサイクル」であること。
②産業廃棄物として委託を受ける場合は、「委託契約書(受託業務終了報告)」を作成すること。
マテリアルリサイクルとはマテリアル(物)からマテリアル(物)へと再利用することを指します。例えば古紙を再利用して新聞用紙や包装用紙を作る場合や、アルミ缶を再利用して自動車部品やフライパンを作る場合に使われる言葉です。なぜこれが条件になるかというと、それは「専ら物」が「再生利用目的だけに供される廃棄物」だからです。仮にその処分方法が、例えば熱回収を含む焼却や埋め立てなどだった場合、それは単なる「廃棄物」としての扱いになるため、「再生利用目的だけに供される廃棄物=専ら物」にはなりません。このような場合には収集運搬・処分についての(対象地域全ての地方自治体の)許可が必要になります。
このブログでは、焼却される廃衣料と排出されるCO2を削減するために、生分解性ポリエステル繊維の生分解処理(堆肥化)について触れました。現時点で国内では生分解処理はリサイクルと認められていませんから、マテリアルリサイクルでもありません。ということは生分解処理可能な廃衣料を回収する場合、一般廃棄物か産業廃棄物かに関わらず、「専ら物」としては取り扱えないことになります。すなわち、回収運搬及び処理するためには、対象となる全地域の地方自治体から許可を得る必要があります。対象地域が不確定な状態で全国的展開をするには非常に大きな障害になります。また産業廃棄物の場合にはマニュフェストが必要になります。廃棄物やCO2排出を削減するために、どのような処理をリサイクルとして認定するのかという点については一考する必要があると思います。技術や素材の進歩に合わせて、サステイナブルな技術や素材の普及を促進するような制度設計が必要だと思います。