三陽商会、100%持続可能な素材でつくるファッションブランドを展開

2019年10月29日付けSustainable Brand Japanに掲載された記事より

三陽商会が、100%持続可能な(サステイナブルな)素材を使ったスペイン発のファッションブランド「ECOALF(エコアルフ)」を日本で展開する。使用するのは、海洋プラスティックなどからできた再生素材や環境負荷の低い天然素材。ブランド自らが廃棄物を回収し、製造まで行う仕組みで、日本(エコアルフ・ジャパン、三陽商会の子会社)でも2021年を目途に、国内の海洋プラスティックをアップサイクルして衣服などを作る。”

エコアルフは2009年、スペイン・マドリッドで誕生した。創業者ハビエル・ゴジェネーチェ氏が、子供が生まれたことをきっかけに、本当に持続可能なファッションブランドをつくろうと立ち上げた。現在、スペインのほかにドイツやイタリア、スイスに店舗があり、11月にはアムステルダム、12月にはパリで旗艦店がオープンする。

ビジョンは、地球環境を無視した自然資源の活用をしないこと。ミッションは、リサイクルされていない製品と同等の品質・デザインの製品をつくること。ブランドの思想を示すキャッチフレーズ「Because there is no planet B(第2の地球はないのだから)」。流行に左右されない、スタイリッシュで機能的なデザインが特徴で、商品の価格帯はアウターが2-3万円、シューズが1万円前後という。”

ECOALF by 三陽商会

“「年間5000億枚のプラスティック袋が使用されているが、袋が使われる時間は30分程度。海底には65万トンの漁網が沈んでいる。プラスティックは数百年間、分解されない。30分間しか使われないプラスティック袋が、アップサイクルすることで30年間使える衣服になる。」と、ゴジェネーチェ氏は述べています。”

“エコアルフの衣服や雑貨に使われている素材は、主にペットボトルや廃棄された漁網、タイヤ、コーヒーの残りかす、廃棄コットン、廃棄ウールなど。こうした素材を100%使っている。自社に、海洋プラスティックを分別・回収し、製品をつくる仕組み「アップサイクリング・ジ・オーシャンズ」があることが強み。その役割を担うエコアルフ財団はいま、スペインの37か所で3000人以上の漁師と連携してプラごみを回収する。

国内でも2021年までに、同様の取り組み「アップサイクリング・ジ・オーシャンズ・ジャパン」を実現する計画。今後、海洋プラを回収・分別し、それをポリマーや糸に変えるためのパートナーを探してゆく。エコアルフでは、商品だけでなく副資材や包装材・店舗資材なども100%環境負荷の低い素材を使う。2020年の春に東京・渋谷で第1号店となる旗艦店が開店する。2020年度に20店舗の出店計画を立てており、2025年には年間60億円の売り上げを目指す。”

とても意欲的な取り組みだと思います。ブランド自らが廃棄物を回収・分別して製品を製造するシステム、「アップサイクリング・ジ・オーシャンズ」を持っているところが素晴らしいと思います。「スペインの37か所で3000人以上の漁師と連携してプラごみを回収する」となると、もうワクワクしてしまいます。「ビジョン」、「ミッション」、「キャッチフレーズ」にも大変好感が持てます。価格帯も決して高価なわけではなく、良心的だと思います。欧州で多店舗展開しているので、コンセプト、商品、価格帯が市場に受け入れられて、ビジネスとしても成功しているのだと思います。

海洋から回収したペットボトルや廃棄された漁網を原料としているようですが、それらを洗浄して粉砕・裁断し、溶融・紡糸しているとすると(マテリアルリサイクル)、不純物が十分に除去できずに再生繊維の品質にムラが生じるのではないかと思います。解重合して不純物を除去し、再重合しているとすると(ケミカルリサイクル)、純度の高い再生繊維が得られると思いますが、相当の設備と技術が必要になります。どのようなプロセスをとっているのか、非常に興味があるところです。

国内でも、2020年春に第1号店がオープンし、エコアルフ・ジャパンが2021年までに欧州と同様の取り組みを実施する計画です。できあがった製品を輸入して販売するだけでは、国内の廃棄物問題の解決(サステイナビリティ)に貢献することにはなりませんから、是非とも「アップサイクリング・ジ・オーシャンズ・ジャパン」を成功させて欲しいと思います。「今後、海洋プラを回収・分別し、それをポリマーや糸に変えるためのパートナーを探してゆく。」とのことですが、この点がこのオペレーションがうまくいくかどうかのポイントです。国内で(このところ再利用のためだとしても廃棄物の輸出は難しいので)、良いパートナーに恵まれることを願っています。来年度中に20店舗まで拡大の予定ですが、あとはコンセプト、商品、価格帯が日本市場に受け入れられるかどうかということになります。国内市場でも、このところ環境配慮した製品への関心が高まってきていますので、うまくマーケティングして立ち上げて欲しいと思います。期待しています。

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