無印良品、オーガニックコットンとリサイクル

三井住友フィナンシャルグループの環境情報誌「SAFE」VOL.125(2018年9月)に掲載された記事からです。

最近では多くのアパレルメーカーがオーガニックコットンの活用を進めています。従来、コットンの栽培には大量の農薬が使用され、人体や環境に及ぼす影響が懸念されてきました。試算によると、世界の耕地面積の中でコットン畑が占める割合はわずか3%なのですが、農薬の消費量は全体の11%、殺虫剤については24%に上ると言われています。

「無印良品」を手掛ける(株)良品計画は、いち早くオーガニックコットンの活用に取り組んできた企業です。2000年から取り組みを開始し、2018年時点で商品に使われるコットンを100%オーガニックコットンへ転換しています。オーガニックコットンを採用した理由について、「地球環境もさることながら、農薬が生産者の健康に与える影響を懸念しています。生産者に配慮することは、無印良品のモノづくりの根幹に関わる大事なファクターだと考えています。」と述べています。

衣料品の製造現場では、布を裁断する際に発生する端切れが大きな環境負荷となっています。良品計画によれば、無印良品の2017年春夏シーズンのカットソー商品をつくる工程で発生した端材はTシャツ数百万枚に相当する量だということです。衣料品を製造する上で避けられない端材は、これまで産業廃棄物として処理されていました。しかし同社では製造工程で発生する裁断端切れを「再生コットン」として蘇らせる取り組みを2017年からスタートしています。産業廃棄物を扱う業者に依頼してリサイクルする場合は、再生されるのは雑巾や軍手などです。自社製品に使うことで資源を循環させることを目指した取り組みです。

衣料品のマテリアルリサイクル:その実態と限界>の項参照

端材は繊維が短く、それだけでは良質の製品に再生することができません。そこで、未使用の原料を半分混ぜることで品質を改善しました。最初は限定販売でしたが、2019年から全店舗で展開し、量を増やしてゆく計画です。

該社は、「無駄なものをつくらないということが一番大事。いくら環境に配慮しながらモノづくりに取り組んでも、売れ残ったりすれば無駄になってしまいます。そのため。生産、販売、在庫をリンクさせ、商品計画の精度を上げることがとても重要です。」と述べています。

良品計画が進めるリサイクルは、自社が廃棄するごみを減らすだけではありません。使用済みの商品を消費者から回収し、新たな資源として再生する取り組みを2010年から展開しています。繊維の一部(コットン)はエタノールへ、ボタン等のポリエステル素材は再生ポリエステル繊維へリサイクルされています。

無印良品のリサイクル

さらに、回収された衣類の中から状態のよいものを仕分け、色を染め直して新たな商品として販売するプロジェクト「ReMUJI」を2015年から開始しています。消費者から回収したものの中にまだ着られるものがあることに気づいたのがきっかけで、古いものに手を加えて新しい価値を生み出す「アップサイクル」の手法で、こうした服を再利用しています。該社は、「昔から日本では、色を染め直したり、刺し子をして補強したりしながら服を最後まで大切に着ていました。ReMUJIを通じて、日本古来の文化に立ち返り、服を大切に着るということを考えてゆきたいと思います。」と述べています。

Bring:日本環境設計(株)が展開する回収・リサイクルの取り組み

https://www.jeplan.co.jp/ja/bring_collection_project/#

コットンを糖化して発酵させバイオエタノールを得たり、ポリエステルをエチレングリコール溶液中に解重合し、得られた粗BHET(ポリエステルモノマー)を精製、再重合して高純度のポリエステル樹脂を得るリサイクル・システムを展開している。

ファッション衣料の環境配慮については、オーガニックコットンや再生ポリエステル繊維の使用のように、製品のライフサイクルの「入口」での取り組みが中心になりがちです。これは衣料品をリサイクルする場合には、回収や分別に大変手間(コスト)がかかることや、リサイクル処理の制約が多いことが影響しています。しかし無印良品では、製品のライフサイクルの「出口」での環境配慮にも取り組んでいます。縫製時の端材を自社製品で再利用する「再生コットン」や、消費者から回収した製品の一部を「ReMUJI」としてアップサイクル・リサイクルする取り組みです。これらは独自に工夫されたマテリアルリサイクルです。また自社内で再利用できないものについては、Bringとの連携でケミカルリサイクルを進めています。衣料品(すべてのモノ)は、いったん生産されれば、最後は必ず廃棄物になりますから、製品のライフサイクルの「入口」と「出口」の両方で、できるだけ環境負荷を低減することを考えなければなりません。それらと同様に大切なことは「無駄なものをつくらないということが一番大事」「服を大切に着る」という意識だと思います。

Follow me!