号外:P&G、海洋プラで容器 漂着多い日本に照準

2019年11月6日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より

米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は6日、日本の海岸で回収した海洋プラスティックごみを洗剤容器に再生すると発表した。台所用洗剤「JOY(ジョイ)」で容器原料の25%に海洋プラごみを使った製品を今月9日から55万本出荷する。1~2ヶ月分の販売量に相当する。店頭想定価格は158円で、既存品と同水準にした。日本で海洋プラごみを使った日用品は初めてという。

P&Gの製品「JOY」

“P&Gは欧州で2017年から海洋プラごみを容器の一部に使用した台所用洗剤やシャンプーを発売し、北米でも今年から販売している。次の展開地域として日本を選んだのはアジアからの漂着ごみが多いうえ、高い再生技術を持つリサイクル企業が多いことが理由だ。回収から加工まで国内で完結でき欧州より多くの量を再生できる。今回は長崎県対馬市の海岸に漂着したごみをボランティアが回収。提携業者が分別し6トンのペットボトルを選別し粉砕・洗浄して容器に再利用した。”

“世界の中でも日本の海岸への海洋プラごみの漂着は多いとみられている。それでも日本で海洋プラごみの再利用の取り組みが少なかったのは、コスト面での課題があるためだ。P&Gジャパンの台所用洗剤も、陸上で正規ルートで回収した再生プラよりも原材料費は割高だ。海洋プラごみは回収量が安定しないうえ、再利用できる品質にするための分別費用が通常のプラスティックの再生に加えて必要になる。国内の日用品メーカーは使用量の削減や通常の再生プラの活用などで、結果的に海洋プラごみの削減を目指している。花王もプラスティック使用料を減らした新容器を2030年までに年3億個普及させる目標を掲げている。”

“海外のメーカーも同様の取り組みは進めているが、加えて実際の海洋プラごみの再利用を始めているのは、この問題への国際社会の関心が高まっていることも大きな理由だ。”

「プラスティック使用量の削減や通常の再生プラの活用などで、結果的に海洋プラごみの削減を目指す」という間接的な取り組みから、実際の海洋プラごみを回収・分別して容器に再利用するという直接的な取り組みへ、一歩踏み出したP&Gの事例です。背景には、この問題に対する国際社会の強い関心があり、一般家庭で使用される日用品を製造販売するメーカーとして、消費者の期待に応えてゆかねばならないという責任感があります。今回対象となっている台所用洗剤については、店頭価格は既存品と同水準にするとのことですが、上記からも明らかなように、実際の海洋プラごみを再利用するためのコストはかかっています。このコストアップについてはP&Gが負担することになります。P&Gの姿勢に敬意を表するとともに、やはり実際の海洋プラごみを再利用する試みは重要だと思います。

海洋廃プラの利用例

日本は周囲を海に囲まれた海洋国家です。日本から海洋プラごみの流出を抑える努力をすることは当然ですが、その一方で海洋国家であるがゆえに、周辺国からの海洋プラごみを含む海洋ごみの漂着が多いというのも、残念ながら現実です。海洋国家である日本が、海洋ごみ、海洋プラごみの削減のために、技術と知恵を総動員してリーダーシップをとるべきだと思うのは私だけでしょうか。その意味からも、実際の海洋プラごみを回収して再利用し、その実例を世界に示してゆくことは大切だと思います。ただコストはかかります。このコストアップを企業に任せていては限界があると思います。私たちが生活している環境を守ってゆくための行動ですから、そのコストはみんなで負担してゆくような仕組みが必要です。

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