号外:温暖化対策、「アメリカ抜き」進む

2019年11月5日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より。

トランプ米政権は4日、2020年以降の地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」から離脱すると国連に通告した。欧州連合(EU)は2050年の温暖化ガス排出を実質ゼロにする方向で加盟国間の調整を進める。地球温暖化対策を十分にとらない国に対し輸入関税を引き上げる「国境炭素税」制度を創設する検討に入る。生産過程で温暖化ガスの排出が多い鉄鋼や石油化学の関連製品が対象になりうる。念頭にあるのは米国やブラジルだ。”

パリ協定はすべての国が温暖化対策に取り組む初めての国際協定として2015年12月に採択され、2016年11月に発効した。スピード発効を主導したのが、世界の2大排出国である米中だ。当時のオバマ米大統領と中国の習近平国家主席の合意が呼び水となり、各国による協定批准が進んだ。だがトランプ米大統領は自国の石炭・石油産業への配慮から、就任後の2017年6月にパリ協定からの離脱を表明した。

“とはいえ、トランプ政権が離脱手続きに入っても、米国の温暖化防止の取り組みに当面は大きな影響はでないとの見方も強い。米企業には「消費者の環境意識の高まりに配慮せざるを得ない」との声が強く、カリフォルニア州など環境規制に熱心な自治体も少なくないためだ。米アマゾン・ドット・コムは9月、2040年までに事業から出る温暖化ガスを実質ゼロにする方針を表明した。そのために、電気トラック10万台を配送用に新規購入する。”

“世界最大の排出国である中国も国際世論を無視できなくなっている。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、中国では2018年までの10年間に風力の発電容量が22倍、太陽光は700倍弱に急拡大し、水力を合わせた再生エネルギーで世界の30%と2位の米国(10%)に差をつける。ハイテク産業育成策「中国製造2025」でも再生エネルギーは重点分野のひとつだ。”

“取り残されかねないのが日本だ。日本は温暖化ガスを2030年までに2013年度比26%削減を目指すが、原子力発電所の再稼働が停滞し、再生エネルギーの普及も遅れる現状では達成困難だ。パリ協定は各国が自主的に排出削減目標を定める仕組みだ。協定は産業革命前からの温度上昇を2度未満に抑えるのを目標にするが、現状の各国計画では約3度上昇するとされる。

日本のCO2総排出量(出典:温室効果ガスインベントリオフィス)は2010年には12.1億トンでした。2011年の東日本大震災後に原子力発電所の稼働が停止し、2013年には13.2億トンまで増加しました。パリ協定に基づく日本の現在の排出削減目標は、震災後ピークである2013年比26%削減ですが、その達成が難しそうだと言われています。

「廃プラ」対策において、日本は総排出量の約60%をサーマルリサイクルしているという話がありましたが、これは結局、余熱を利用しているとしても、廃プラを焼却してCO2を排出しています。

日本の脱「廃プラ」に遅れ、企業はバイオ転換急ぐ>項参照

原子力発電所の稼働については、老朽化した設備の安全性の確保、地域住民の理解を得ることの難しさなど課題が山積しています。その一方で再生可能エネルギーについては、色々な試みは実施されていますが(太陽光、地熱、洋上風力、海流等)、まだ既存のエネルギー源の代替としての実績が伴ってこないように思われます。このままでは、日本は温暖化対策の後進国になってしまうのではないかと心配です。

もちろん、CO2の排出は発電だけの話ではありません。各産業から排出されるCO2を技術革新によって削減したり、自動車に代表される移動・運送手段から排出されるCO2を削減する方法もあります。それぞれの分野では関係者のみなさんが、知恵を絞って開発、改善に努められているのだと思いますが、全体がどのようなバランスでCO2排出削減目標を達成しようとしているのかが、国民には分かりにくくなっているように思います。国民に対して、「CO2排出量削減のために、もっとこうして欲しい」という具体的な依頼やキャンペーン活動があってもいいと思います。守らなければならないのは、私たち全員が生存してゆく環境なのですから。

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