号外:多くのスウェーデン人は飛行機での移動をやめている
2019年11月5日付けハフィントンポスト・ジャパンの記事からです
スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんが8月の国連会議に出席するために、温室効果ガスの排出が多い飛行機を使わず、ヨットで大西洋を2週間航海してニューヨークに渡ったことが話題になりました。スウェーデンでは、彼女に影響を受けた人々が環境に優しい移動手段を選択する動きが広がっているそうです。
「自分の行動から出る排気ガスを最低限に抑えるために、鉄道を利用しています」と語る23歳の女性は、彼女の両親と2人の弟妹たちと、2019年は飛行機を一切利用しないという挑戦をしており、その目標は達成に近づいているそうです。彼女は3本の鉄道とフェリーを利用して、約1400キロ離れたブダペストに友人と訪れたほか、2週間かけてオランダとドイツを鉄道でボーイフレンドと回ったそうです。「私としては、鉄道は1回の休暇で多くの場所を訪れるのにぴったりだと思う。是非またやりたい」とのことです。
別の女性は、「スウェーデンでは、もっと貧しい国に住んでいる人たちより、ずっと多くの物を消費します。もし、環境への負荷がより低い移動手段を選ぶことでエネルギー消費を削減でき、少しでも変化を起こせるなら、私はやるべきだと思います。」という意見です。
スウェーデンは長い間、「サステイナブルな国」としての高い評価を得てきました。再生エネルギーへの大きな投資や、家庭ごみの1%以下しかゴミ廃棄場へ行かないそうです。しかし、これは消費が少ないということを意味しているわけではありません。WWF(世界自然保護基金)の2016年のレポートによると、世界中がスウェーデン人と同様に消費すると、4.2個の地球が必要になるとのことです。
人口約1000万人のこの国で、1万4500人の人が国中で行われた「飛行機で移動しない2019年」キャンペーンに参加し、主催するNPOによると2020年は10万人、つまり人口の約1%が飛行機での移動をやめることを期待しているそうです。スウェーデン国内の主要空港を運営する企業によると、これまで、1月からの国内の乗客数は8%低下し、国際では3%低下したということです。一方で、スウェーデンで購入されたインターレイルチケット(ヨーロッパ中を旅できる電車パス)は、過去2年間で3倍に増加しました。
スウェーデンでは、2018年に破壊的な森林火災が発生しました。火災は北極圏まで達し、その夏に約2万6000ヘクタールを焼き尽くしました。これはスウェーデンの近代史の中で最悪の火災となり、地球温暖化によってどのような被害が起こるのかをスウェーデン国民に明示しました。そしてその9月、グレタさんは気候ストライキを始めました。
スウェーデンは国土面積も小さく、強い鉄道インフラがすでに存在していたことが、他国に比べて「飛行機で移動しない」トレンドが早く広まった大きな要素です。鉄道の旅は、必ずしも安いわけではなく、体が楽なわけでもありません。しかし今後は国際的な鉄道乗り継ぎを一層整える計画もあり、このトレンドは続いてゆくと言われています。
日本も国内については鉄道網が整っています。新幹線の整備も進み、国内移動については鉄道が占める割合が高いと思います。しかし島国ですから、国外に行くには、飛行機か船を使わなければなりません。近距離ないしは優雅な旅行でもなければ、飛行機を使うことになりますね。移動の方法だけではなく、みんなが可能な範囲で環境負荷の低い生活を心掛けることは、とても大切なことだと思います。