フレックスジャパン(長野県)、シャツ回収でリサイクルシャツ製造へ

2019年12月4日日本経済新聞電子版掲載記事より

ワイシャツメーカーのフレックスジャパン(長野県千曲市)は、着古したワイシャツをリサイクルしてワイシャツを再生産する取り組みを開始します。自社直営店の店頭に回収ボックスを設置し、回収したシャツを原料に戻し、その原料からワイシャツを製造します。およそ1年後の商品化(再生ワイシャツ販売)を目指しています。同社は過去にペットボトル由来のリサイクルシャツの製造・販売に取り組みましたが、採算性などを理由に撤退しています。今回、改めてリサイクルシャツに取り組むことで、環境に配慮したサステイナブルなビジネスを強化してゆきます。12月から東京・立川市の店舗に回収ボックスを設置しました。今後2月にかけて県内外にある6つの全直営店に回収ボックスを設置し、回収を拡大してゆきます。

店頭回収ボックス

“一連の取り組みは、リサイクル事業の日本環境設計(東京都千代田区)が実施する「BRING」だ。BRINGは、参加するアパレル店舗で着古した衣服を回収し、日本環境設計が分別する。着られる服はリユースし、着ることのできない服はポリエステルやコットンといった原料に戻す。再生原料は再度アパレルメーカーの工場に運ばれ、新たな商品に生まれ変わる。”

BRINGのリサイクルについては<無印良品、オーガニックコットンとリサイクル>の項でも取り上げていますので、そちらを参照してください。BRINGによるワイシャツ向けの織物用糸は現在開発中で、1年後をメドに完成した再生糸を利用して、フレックスジャパンがワイシャツに仕立て、販売する計画です。

同社によると、「過去のリサイクルワイシャツ(ペットボトル由来)は総合スーパー(GMS)などでの販売が中心だったため、低価格帯に設定せざるをえなかった。一方、BRINGで作るワイシャツは中価格帯にする予定で、一定の利益を確保するようにする。」とのことです。また、回収ボックスをきっかけに顧客の買い替え需要を喚起することを目指しています。回収ボックスの存在は若い世代を中心に認知が高まっており、店舗の集客効果が期待できるとのことです。

同社が取り組むもうひとつの環境配慮事例をご紹介します。立川の店舗では12月から、商品の販売時にワイシャツの形状を保つために使用するクリップなどのプラスティック資材を、外して顧客に渡す取り組みを始めました。回収したプラスティック資材は、別の商品に使う資材として社内リサイクルします。2枚のワイシャツで、500mlのペットボトル1本分に相当するプラスティックを削減できるそうです。

ワイシャツの副資材

フレックスジャパン(株)は、1940年創業の国内大手ワイシャツメーカーで、2019年2月期の売上高は約100億円です。国内のワイシャツの市場規模は約5000万枚/年と言われています。同社は約1000万枚/年のワイシャツを生産しており、市場シェアは約20%です。同社の製品は97%が海外の生産拠点(中国、インドネシア、ミヤンマー、バングラディッシ)で縫製されています。国内は2工場(本社長野工場と天草工場)で、オーダーメイドシャツを生産しています。

ワイシャツは、ビジネスマン(ウーマン)にとって非常に身近なアイテムです。月曜日から金曜日まで、ほとんど毎日お世話になっています。近頃のクールビズ期間中でも、ネクタイはしないとしても、ワイシャツ(シャツ)を着用している方は多いと思いますし、週末に着るカジュアルなシャツもあります。ワイシャツ(シャツ)は比較的素材構成や縫製仕様がシンプルなので、リサイクルには向いているアイテムです。フレックスジャパンはBRINGと連携していますので、リユースとケミカルリサイクルを組み合わせた手法になります。ケミカルリサイクルでは、原料に戻して、その原料から再製品化しますから、循環型のリサイクルです。どの程度の使用後製品回収率になるのか、BRINGで原料に戻す工程の生産ロットや再生原料の品質、さらにその原料を再製品化するプロセスでの効率と品位などなど、これから確認してゆかねばならないことはたくさんあります。しかし、このような取り組みをひとつひとつ実施してゆかないと、衣料品のリサイクルは広がってゆきませんし、持続可能社会の構築(サステイナビリティ)につながってゆきません。色々と手間がかかりますから、今回は中価格帯での展開を考えているようですが、是非とも成功させていただきたいと思います。

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