ゴールドウィンのアウトドア衣料カスタマイズ受注生産

アウトドア衣料ブランド「ザ・ノース・フェイス」などを展開するゴールドウィンは、アウトドアウェアのサイズや色を客の好みにカスタマイズして注文できるサービス「141 CUSTOMS(ワンフォーワンカスタムズ)」を開始しました。渋谷の商業施設「渋谷パルコ」内の「ザ・ノース・フェイス・ラボ」で受注します。

ザ・ノースフェイス・ラボ

店内の採寸スペースに3次元計測技術を導入し、客が専用のスーツに着替えて採寸スペースに入ると、商品のカスタマイズに用いるアバター(3次元モデル)に体の各部分の寸法が反映されます。客と店員はアバターが商品を着用した状態をモニター上で確認しながら、袖の長さや各部の色、裏地やボタンの種類などを決めてゆきます。完成したデータは富山県小矢部市にある「ゴールドウィン テクニカルセンター」に送られ、そこにいる職人が1着ずつ商品に仕上げます。

衣料品のオーダーメードは昔からある手法ですが、近年はITを取り入れて効率を上げた「マスカスタマイゼーション」が広がりつつあります。マスカスタマイゼーションを目指す取り組みの背景には、無駄な商品を製造・流通させずに顧客ニーズに対応したいというアパレル業界共通の問題意識(サステイナビリティ)があります。近年は環境負荷の観点から、衣料品の大量廃棄に対して消費者から厳しい目が向けられています。また余剰在庫の値下げ販売はアパレル企業の業績を圧迫し、ブランドイメージを傷つける可能性もあります。

同じ課題に対して、ユニクロは異なるアプローチをとります。ユニクロは自社でマスカスタマイゼーションに取り組む予定はありません。理由は、顧客の欲しいものを即時に渡すことができないからです。同社は、需要予測に応じて店舗ごとの商品構成を柔軟に変え、無駄な商品を製造・輸送することなく、顧客ニーズに対応することを目指しています。これを実現するためには、精度の高い需要予測、柔軟な生産体制、きめの細かい物流体制が必要になります。簡単なことではありませんが、ベーシックなカジュアル衣料が中心のユニクロならではのアプローチです。

一方、従来の大量生産で成長してきたアパレル各社が、規模を維持したままでマスカスタマイゼーションに移行することも容易ではありません。成熟した市場で、無駄な生産や余剰在庫の廃棄を避けながら、顧客のニーズに対応して成長するために、アパレル各社は色々なアプローチを検討しています。

アパレル各社は、展開する服種、ターゲットとする顧客層、製品の価格帯、販売するチャネル(ルート)もそれぞれ異なりますから、アパレル各社に共通するような手法、システムの構築は困難です。衣料品に限らず、「無駄なものは生産しない」ということは、資源の有効活用、環境負荷低減の観点から、今後のすべての製造業に求められる要件です。アパレル各社も、それぞれの個性を踏まえたうえで、有効な手法を確立してゆくことが必要です。

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