号外:米国企業経営者、政府にパリ協定への残留を求める声明を発表

2019年12月6日付けSustainable Brand Japanに掲載された記事より

「パリ協定」は2015年の気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択された、2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みです。11月4日、米国のトランプ政権は「パリ協定」からの離脱を正式に国連へ通告しました。

COP25が12月2日、スペインの首都マドリードで開幕。米国では、アップルやグーグル、マイクロソフト、セールスフォース、ウォルト・ディズニー、ギャップ、コカ・コーラ、ネスレなど様々な分野で200万人以上を雇用する75社のCEOと1250万人の労働者を代表する米国労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)が、「パリ協定は世界を繁栄させるための約束。米国はパリ協定に残るべき」との共同声明を発表した。

“今、気候危機は深刻な局面を迎えている。その中で、先進的なビジネスリーダーたちは、健全な経済や国・企業の競争力、各社の従業員や地域社会のウェルビーイングを考えて今回の声明に署名している。米国のビジネス界のリーダー達は、トランプ大統領が2016年の選挙時にパリ協定を離脱する意思を示してから、同協定を支持してきた。”

NYC マンハッタン

この1年間、民間企業は政府に対して気候変動から経済を守る対策を促進することを新たに求めてきた。昨年、トランプ政権がポーランドで開催されたCOP24で化石燃料の推進を表明したことに大きな反対を示した。その際、32兆ドルの資産を管理する415のグローバル投資家は企業や都市、州とともに、政府に対して気候変動を止めるためのさらに積極的な行動を呼びかけた。

米国政府(トランプ大統領)の方針とは別に、米国の企業や労働組合、州政府などは「パリ協定」残留、すなわち積極的な気候変動対策、温室効果ガスの排出抑制を求めて、政府に働きかけています。以下は代表的な経営者のコメントです。

「地球を守り、すべての人の持続可能な成長を実現しながら、気候変動に対応するには、世界規模での行動が必要です。パリ協定は気候変動に対応するために、すべての国々を一つにしました。米国は、国民と世界のためにもこの重要なイニシアティブの1員であるべきです。」

現在と将来世代のためにも、今日われわれが直面している環境危機を無視してはいけません。企業や政府、市民社会、そして個人が共に行動し、もっと野心的になるべきです。行くところまで行ってしまうと、死んだ地球でビジネスは行えません。このキャンペーンは良いスタートです。すべての企業がここに参加することを求めます。」

政府の方針に反することでも、企業が明確な意思を表明するところは米国社会の良いところだと思います。日本政府は「パリ協定」に参加して温暖化対策を推進する立場をとっていますが、実際の施策はあまり野心的ではなく、なかなか世界の理解を得られていませんし、日本の企業や労働組合、地方自治体から、より積極的な政府の対応を求める声があがっているわけでもありません。例えば、個々の企業ベースで、独自の温暖化対策を自社のオペレーションに組み込む動きはありますが、それらが一つの「流れ」になって社会にインパクトを与えるところまでは行っていないように思います。

これだけ気候危機についてのニュースが溢れ、日本でも温暖化の影響で集中豪雨や大型台風の被害が発生していますが、まだ、あまり切迫感がないように思います。個々人が、各企業が問題意識を持ち、その問題意識を共有することは必要ですし、大切なことです。しかし今、本当に必要とされていることは、連携して行動することだと思います。米国企業や労働者、欧州主要国などから後れを取って、温暖化対策の後進国と言われないように、国、国民として(私個人としても)、より主体的にこの問題に取り組んでゆくべきと思います。

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