号外:LOOP:テラサイクルの包装容器再利用事業、東京での試験運用
このHPでも「ユニリーバ」の項でご紹介した、テラサイクルのLOOP(包装容器再利用事業)の試験運用が、来年(2020年)秋から東京で始まります。
<ユニリーバ、100%再生ポリエステル容器へ切り替え>の項を参照
東京都がプラスティック再利用のビジネスモデルとして支援を決めたLOOPに、P&Gジャパンやイオン、味の素、キャノンなど13社が参画します。LOOPは欧米の一部で始まっていますが、東京での試験運用では、容器の回収から高度な洗浄、化粧品や飲料などの詰め替え、配送という一連のシステムが適切に稼働するかどうか、コストをどのように算定するかなど事業化の詳細を検証します。
参画13社:味の素、I-ne、イオン、エステー、大塚製薬、キッコーマン、キャノン、キリンビール、サントリー、資生堂、P&Gジャパン、ユニチャーム、ロッテ
テラサイクルのミッションは、「ごみという考えを世界からなくすこと。適正価格と利便性を維持しながら使い捨て文化から抜け出すこと」であると、CEOのトム・ザッキー氏は述べています。
参画各社の製品は、テラサイクルジャパンが独自で構えるオンラインプラットホームと小売店で販売されます。小売業として唯一参画するイオンは来秋から、参画するメーカーのLOOP商品を都内の「イオン」、「イオンスタイル」で販売し、使用後の容器も店舗で回収します。2021年からは、本州・四国の約400店舗で事業を展開する計画です。来秋の販売開始から約1年間、小売業でLOOP商品を販売できるのはイオンのみになります。
この試験運用について2019年12月5-7日に開催された「エコプロ2019」で紹介され、参画各社はステンレスなどを使った試作容器を展示しました。LOOPのために開発される容器は、環境に配慮するだけではなくデザイン性も高く機能的な耐久性のあるデザインです。容器を所有するのは各メーカーで、消費者が追加料金を負担することはありません。テラサイクルジャパンでは、商品の配送と回収、容器の洗浄までを担当します。
瓶入りの芳香剤「消臭力」の参考商品を紹介したエステーは、「米国でLOOPが評価されているのは、ごみが出ないということとデザイン性。来秋の試験運用に向けて、デザイン性にもこだわって試行錯誤している。」と述べています。
キッコーマンは瓶入りの醤油とトマトジュースを販売する予定です。「醤油瓶などがリユースして何回使えるのか、汚れがちゃんと落ちるのかということをこれから検証してゆく。」としています。
味の素は、顆粒の和風だしやコンソメをステンレス製などの容器に入れて販売する計画です。「容器をどのデザイン、材質にするかはこれから決める。調味料は湿気やすく、湿気対策も必要になる。将来的には機能性でも新しい価値を提供し、イノベーションにつなげたい。」と説明しています。
東京都は、2030年までに家庭や大規模オフィスから出される廃棄プラスティックの焼却量を4割削減する計画で、プラスティックの持続可能な利用を促進してゆきます。LOOPの試験運用は来年、日本以外では、3月に英国、5月にカナダ、11月にドイツで始まります。2021年にはオーストラリアでも始まる予定です。LOOPでは、メーカーや小売店との連携が大切ですが、循環経済を実現するために何よりも大切なことは、消費者一人ひとりがこの取り組みに参加してゆくことです。
ドイツでは、ビールもミネラルウォーターもワインも容器は瓶が中心です。ビールとミネラルウォーターの瓶は規格が統一されていて、洗浄してそのままリユースされています。ワインの瓶は色ごとに分別してリサイクルされています。日本では、ビールは缶が中心で、ミネラルウォーターはペットボトルが中心ですね。アルミ缶やスチール缶、ペットボトルはリサイクルされていますが、規格を統一した瓶を洗浄してリユースする方が、環境負荷は低いように思います。もちろん持ち運ぶときに重かったり、瓶が割れたりということはあるのですが、多少の利便性をがまんしても環境に配慮する姿勢は必要だと思います。
<ドイツにて:サステイナブルなライフスタイル>の項を参照
日用品の包装容器については、素材によっては(例えばペットボトルや食品トレー)リサイクルされる場合もありますが、基本的にはワン・ウェイ(一度の使い切り、使い捨て)で価格に含まれています。一度しか使わないし、価格に含まれるので、できるだけ低コストなものが使われる傾向です。この包装容器を、LOOPのように回収してリユースするように視点を変えれば、包装容器は使用者(消費者)に帰属するのではなく、メーカーに帰属することになり、繰り返し使うことを前提に素材やデザインを改良し、使い勝手を良くするための機能付加なども可能になります。もちろん、そのためのシステム構築や洗浄・再利用のための技術も必要になりますが、資源の有効活用と環境配慮という観点からは非常に有意義な、サステイナブルな取り組みになると思います。色々と課題は出てくると思いますが、東京での試験運用が成功して、新しい循環経済の形として普及してゆくことを期待しています。