東レのICタグ:I o T普及を後押しするテクノロジー

2020年1月18日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より

東レは衣料など商品の在庫管理などに使うICタグを、1枚2円以下と従来の5分の1程度のコストで生産できる技術を開発した。情報などを記録する集積回路を特殊な素材で直接印刷し、生産工程を大幅に減らせる。ICタグはあらゆるモノがネットにつながる「IoT」にとって重要な部品だ。価格が大幅に下がり、関連サービスの普及を後押しすることになる。”

東レのICタグ

“東レは2022年にもICタグ事業に参入する。ICタグはICチップとアンテナを内蔵し、商品の製造日や賞味期限といった情報を記録できる。無線自動識別(RFID)機能を持ち、記録された情報は専用の機械を使って無線で読み取ることができる。米エイブリィ・デニソンなど欧米企業が約6割の世界シェアを占め、日本勢では村田製作所や大日本印刷などが手掛けている。”

“東レは炭素原子が筒状につながった高強度のカーボンナノチューブを原料として、一定の条件下で導電性を示す新素材を開発した。これを活用し、ICタグの記憶装置となるICチップを基盤フィルムに直接印刷・形成できるようになった。従来品はICチップを組み込むための生産工程などがコスト増の原因だった。東レの新技術で生産コストは5分の1程度になる。”

“近年は企業がICタグなどのセンサーを使って商品などの情報を常時収集・分析し、業務の効率化などにつなげる動きが広がっている。例えば「ユニクロ」はICタグを活用し、商品の搬送や検品作業を大幅に効率化している。

“東レは2020年代後半にはICタグの市場規模が1兆円以上になると見込む。国内でも経済産業省がコンビニ大手各社と2025年までに全商品にICタグをつける構想を掲げるなど、急速な需要の拡大が見込まれる。”

ICタグの市場規模

ファッション産業がサステイナブルであるための要件は色々あります。良い製品を長く使うことや、環境に配慮した素材や加工プロセスを採用することは、産業としての環境負荷低減に貢献します。しかしそのような取り組みだけでなく、生産計画、在庫管理、物流を最適化し、極力無駄を省くことも大切なことです。ユニクロの例のもあるように、ICタグを活用したデータ収集と活用はそのための大きな力になると思います。またここで得られるデータはより精度の高い需要予測にも利用できるでしょう。

これまでのビジネスモデルを革新するためのテクノロジーが次々に開発されています。ICタグはIoTの重要な部品ですから、それを従来より安価に提供できる東レの新技術は、衣料品を含めた多くの製品をより効率的に、サステイナブルに生産・供給してゆく新しいシステムの普及に貢献してゆくと思います。新しい技術が新しい市場を創造するのと同時に、既存の産業の進化を促進するということは素晴らしいことだと思います。

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