ウガンダ発高品質バッグ、「RICCI EVERYDAY」の「アケロバッグ」

「ファッション衣料とサステイナビリティ」というHPタイトルで、ファッション産業における環境配慮をテーマとして情報発信しています。今回は、アフリカで民芸バックや衣料を企画・製造し、日本国内で販売している女性の話です。大量生産される衣料における「環境配慮」とは異なりますが、「自分の夢」「アフリカ女性の夢」を重ね合わせた、素敵なビジネスだと思います。

2020年3月11日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“あの日から9年。2011年3月11日、仲本千津は銀行の総合職として、東京・大手町の法人営業部で働いていた。地震の揺れが収まると、東北から信じがたいニュースが毎日飛び込んできた。東日本大震災のすさまじさを前に「もう、やるべきことを先延ばしにしちゃダメだ」と思い始めた。”

“仲本はいま、アフリカ発のアパレルベンチャー「RICCI EVERYDAY」(リッチー・エブリデイ)の代表を務める。日本とは2ヶ月おきの往復生活だ。ウガンダでシングルマザーが中心となって生産し、希望という意味を込めた「アケロバッグ」を東京・代官山の直営店や百貨店などで販売する。値段は1つ1万円台が中心だ。色とりどりの鮮やかなアフリカン・プリントにファンが増え、現地スタッフには同国の平均月収の2~4倍を払っている。”

アケロバッグの商流

“銀行入行3年目、東日本大震災を機に思い出したのがアフリカ支援の夢だった。高校の授業で国際難民高等弁務官だった緒方貞子さんの活動を知り、大学で国際法、大学院でアフリカ政治を先行した。銀行に入ったのは、まず世の中の仕組みやお金の流れが大事だと思ったからだ。「将来の夢があっても、生きられなかった人たちがいる」。自分には何ができるのか。東日本大震災は仲本が起業を真剣に考えるきっかけとなった。”

“仲本は自分の中でくすぶっていた夢を実現に移すべく、転職を決意した。2011年10月、笹川アフリカ協会(現ササカワ・アフリカ財団)に就職した。ほぼ毎月アフリカへ出張し、エチオピアやナイジェリアなどで農家を支援して回った。やがてウガンダへ駐在することになった。平日は農業支援の仕事をしながら、独立の道を探っていった。”

ウガンダの日常

“首都カンパラの街をあるきながら目を引いたのは、赤や緑など原色をふんだんに生かした生地、アフリカン・プリントだった。植物をモチーフにした柔らかい曲線と大胆な色彩は、見るだけで元気になる感覚があった。「これを使って、アフリカと世界をつなげないか」。直感的に起業のヒントを得た。”

アフリカン・プリントの生地

“現地で、縫製の経験や皮加工の技術を持つ3人のシングルマザーと、2015年に事業を始めた。原資は、貯金していた200万円。小さな部屋を借りてミシンを購入し、手探りでバッグ制作にとりかかった。実際にビジネスを回すには先進国に販路を確保する必要があった。ウガンダから電話で母に相談すると、資本金100万円を用意し、2015年8月に日本で株式会社として登記してくれた。

“母は地元の静岡伊勢丹(静岡市)の催事場に行って受付係といきなり交渉し、バイヤーと会うことにも成功した。1週間、販売スペースを借りる約束を取り付けた。仲本は「アフリカで起業」とリリースを書き、母が片っ端からテレビ局や新聞社にFAXした。地元メディアが特集し、2日後に始まった催事は初納入した20個のバッグが午前で完売した。

“同時期に東京で大規模なアパレル展示会「ルームス」にも参加した。約30万円の費用は、中小企業庁の創業向け補助金で工面した。ビビッドなバッグ約30個を棚に並べ、仲本はバイヤーに声を掛け続けた。ちょうど、SDGs(持続可能な開発目標)の概念が知られ始めた頃だった。「アフリカで女性の雇用を創出している」と説明すると、立ち寄ったバイヤーは聞き入った。そごうや西武百貨店のバイヤーなどから声が掛かり、東京や横浜で次々に催事に出店した。

「いける」と確信し、2016年3月に笹川アフリカ協会を退職した。2019年から洋服にも進出し、同年5月に東京・代官山で直営店を開いた。仲本の年収は銀行時代の約半分になったが「アフリカで弱い立場の女性が仕事で胸を張っていく様子は、何物にも代えがたい」と目を輝かせる。現在の事業全体の売上高は「数千万円」といい、黒字化にはこぎつけた。いまウガンダのスタッフは21人となった。次の目標は年商1億円だ。米国西海岸やオーストラリアにも販路を築けないか、現地調査に乗り出した。”

ウガンダでマネージャーを務める女性は「ここで働いてから家族を養って医療サービスを受けられるようになった」と話す。草の根のビジネスを広げ、身近な人の生活を改善する。もっと多くの人を雇って、もっと多くの女性が未来を語れるようになってほしい。そんな思いで仲本は次のビジネス構想を練っている。”

この記事を読んで、とても清々しい気分になりました。仲本さんのまっすぐな考え方と並外れた行動力には頭が下がります。それと、とても素晴らしいお母さまにも感銘を受けました。デパートの催事場に乗り込んで、娘のために売り場を借りる約束を取り付けてくるなんて、そうそう出来ることではありませんよね。持続可能社会を考えるとき、地球環境はもちろん大切ですが、そこで暮らす「人」が幸せであることがとても大切です。残念なことですが、今でも世界にはSDGsの17の目標に掲げられている問題・課題があります。これらの問題・課題を改善、解決してゆくためには、仲本さんのように具体的な行動をとってゆくことが必要なのだと思います。「ソーシャル・ビジネス」とか「フェアトレード」とか言い方は色々ありますが、仲本さんは自分の行動とビジネスでSDGsの目標を実践しています。仲本さん、これからも頑張ってください。応援しています。

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