号外:プラごみゼロへ協業加速!

プラスティックごみの海洋汚染問題が世界の大きな関心を集め、プラスティックごみ問題の解決に向けて、企業の取り組みが加速しています。

2020年1月20付け日経ESGに掲載された記事より、

“2019年8月、コンビニエンスストア最大手のセブン-イレブン・ジャパンは、高知県内41店舗に、カネカの生分解性プラスティック製ストローを試験導入した。(*)同月、人気ファッションブランドのコムデギャルソン(東京都港区)が世界に19店舗ある直営店で、三菱ケミカルが開発した生分解性プラスティックを使った買い物袋の使用を開始した。微生物の働きによって自然界で分解する生分解性プラスティックの採用は、海洋汚染を防ぐ重要な一歩である。とはいえ、世界に広がる汚染問題を解決するためには、より多くの企業が連携し、技術や資金、知恵を結集して取り組む必要がある。”

(*)カネカのPHBHは海洋生分解プラスティック認証(OK Biodegradable MARINE)を取得している。

“国内では2018年1月、プラスティックの製造から使用、廃棄までバリューチェーン全体で海洋プラスティック問題の解決を目指す「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」が発足した。化学や食品・日用品メーカー、小売りなど258社・団体が参加する(2018年9月3日時点)。”

“プラスティックは軽量で保存性に優れるなど有用な素材である反面、環境汚染や資源の枯渇などマイナスの面があるという前提に立ち、5つの活動を推進する。①プラスティック使用量削減、②マテリアルリサイクル率の向上、③ケミカルリサイクル技術の開発・社会実装、④生分解性プラスティックの開発・利用、⑤紙・セルロース素材の開発・利用―だ。

“CLOMAの澤田会長(花王社長)は、「問題の本質はリサイクル。膨れ上がっている廃プラスティックをどうやって処理してゆくかが重要だ。リサイクルを進めて廃プラをぐんと減らせば、廃プラの発生量が頭打ちになり、資源の循環がうまく回り始める」と話している。”

“日本企業中心のCLOMAに対して、2018年1月に米国で発作したグローバルの企業連合が「アライアンス・トゥー・エンド・プラスティック・ウェイスト(AEPW)」である。参加企業は約40社で、今のところ独BASFや独コベストロなど化学メーカーが目立つ。日本からは、三菱ケミカルホールディングス、住友化学、三井化学が名を連ねる。”

“AEPWに参加する米プロクター・アンド・ギャンブルは2018年4月、2030年までにすべてのパッケージをリサイクル・リユース可能なものにすると宣言した。「プラスティックのリサイクルを普及拡大させるためには、再生プラスティックの市場をつくることが重要だ。当社のようなメーカーが再生プラスティックをパッケージに使うと表明して需要をつくることで、回収インフラの整備や供給能力の拡大につながり、経済合理性も出てくるだろう」と言う。”

“化学メーカーにとって、プラスティックのマイナス面ばかりに注目が集まると需要の減少につながるリスクがある。パッケージなどにプラスティックを使う日用品や食品メーカー、それらの商品を販売する小売業も、消費者や投資家の厳しい目にさらされている。プラスティックごみ対策を怠れば、ブランドイメージや株式市場での評価を下げかねない。

“一方、海洋プラスティック問題に積極的に取り組めば、リスクを機会に変えられる可能性がある。企業の長期的な成長力や企業価値を評価するに当たってESGの要素が無視できなくなっている。そうした中で海洋プラスティック問題を見ると、日本の産業界は優位性が高い。官民が連携したリサイクルシステムやリサイクル技術を有していることは、今後予想されるグローバルな環境規制の強化への耐性を持っていると言われている。日本が培ってきた環境技術やノウハウで世界に貢献できるか。海洋プラスティック問題での成果が試金石となるかもしれない。”

“プラスティックはこれまで、部材として自動車や航空機の軽量化や建物や冷蔵庫の断熱性向上などを実現し、エネルギー使用量やCO2排出量を削減するなど、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献してきた。化学メーカーにとっては、サーキュラーエコノミーは新たな課題であると同時にチャンスでもある。プラスティックが最後はごみとなって寿命を終えるのではなく、再び原料として使えるようにリサイクル体制を構築することが重要だ。

プラスティックは、軽量で物性が安定しており、成形が容易で、しかも安価な、非常に便利な素材です。しかし安価であるがゆえに、手間のかかるリサイクルが普及せず、物性が安定しているがゆえに、自然環境に流出した場合に環境汚染を引き起こします。生産・使用では優れた点が、使用後・廃棄の段階では障害になっています。記事でも取り上げられているように、プラスティックごみ問題を解決するためには以下の点を考えなければなりません。

*プラスティックの使用量自体を削減すること(可能な範囲での代替素材活用)

*リサイクル(マテリアル+ケミカル)を推進すること

*再生プラスティックの市場をつくること(現状ではバージン材料よりも高コスト)

プラスティックごみを原材料として有効活用(リサイクル)するためにはまず、回収し、分別する必要があります。この点に関しては、日本は先進国です。例えばペットボトルの回収率ですが、日本では85%、欧州は40%、米国は20%程度です。日本では優れた廃棄物の分別回収のシステムが機能していますので、これをうまくリサイクルにつなげてゆくことが必要です。

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