廃棄衣服に商機あり、関西のスタートアップ
販売量(売上高)を維持するために販売機会ロスを嫌い、結果として、大量生産→過剰在庫→安値販売→売れ残り品の廃棄といった悪循環に陥ることが多いアパレル企業ですが、その現状をチャンスと捉え、新しい事業に挑むスタートアップが増えてきています。アパレル企業の事業運営そのものを変えていくことも、もちろん必要です。しかし衣料品のファッション性やシーズン性によって、どうしても発生してしまうある程度の「無駄」を、「無駄」として処分するのではなく、新しいビジネス(商流)に活用していくことも大切な取り組みです。
2021年10月28日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
”かつて紡績業が栄え、「東洋のマンチェスター」と呼ばれた大阪を筆頭に関西は日本の繊維産業をリードしてきた歴史を持つ。そんな関西にアパレルや繊維産業の現状をサステイナビリティ(持続可能性)の観点から変革しようとするスタートアップが目立ち始めた。”
”ブリスタ(滋賀県草津市)の本社そばにある倉庫を訪れると、イズム(神戸市)などが展開する約350ブランドのワンピースやジャケットがずらりと並んでいた。これらはレンタル用で、5000以上ある服のほとんどがアパレル各社が売れ残りとして抱えていた商品だ。同社はアパレルの余剰在庫を仕入れて、30~40代の女性向けに服のレンタルサービスを2016年から手掛ける。取り扱うのは店頭価格が3万~5万円の服が中心だ。会社役員や経営者が登録者の3割を占め、仕事や会食向けの洋服を求めることが多いという。”
”高橋瑞季社長は「格安で販売するのではなく、レンタルという形ならばブランドの価値も下がりにくくメーカーも取引しやすい」と話す。新型コロナウイルス禍でアパレル各社の在庫が増えていることを受け、ブリスタでレンタルを希望するブランド数は約2倍に伸びた。今後は実店舗での洋服レンタルや、百貨店などへの出店も検討する。”
”アパレル各社の在庫を個人などに販売するサイト「スマセル」を運営するのがウィファブリック(大阪市)だ。巣ごもり需要などを追い風に取扱量を急速に増やしており、購入する登録者数は2021年1月段階に比べ、9月は3.8倍に増えた。出品者登録するアパレルのブランド数も拓1300店と同期間で2倍に伸びている。環境省の調べでは、2020年に日本の家庭や事業所で不用になった衣服のうち廃棄されたものは全体の65%にあたる51万トンに上る。家庭からの廃棄が大半を占めるが、大量生産・廃棄の構造も問題になっており、大阪の繊維商社出身の福屋剛社長は「無駄の多い業界を変えていきたい」と起業した。サイト上では商品ごとに、捨てられるはずだった服を利用することで削減できるCO2排出量も「見える化」する工夫を凝らす。メーカー、購入者共にSDGs(持続可能な開発目標)への寄与を実感しやすくする狙いだ。”
<アパレル在庫の廃棄減らすマッチングサイト>の項を参照
”洋服のリサイクルに商機を見いだすのがカラーループ(京都市)だ。廃棄された衣服を回収して色ごとに分類し、繊維と樹脂などを混ぜることでブックカバーやペンケースを製造・販売している。着色に繊維を使うため、デニムの風合いなど様々な色を出せるのが特徴だという。現在は百貨店などの店舗で6アイテムを販売している。法人向けの事業も始め、文具メーカーの商品に素材を提供するほか、椅子やテーブルなどに素材を活用する研究も進める。”