アパレル、「お直し」を拡充

衣料品における環境配慮の基本は、手間をかけた良い製品を、できるだけ長く大切に使うことです。購入した服をできるだけ長く使うためには、傷んだり、壊れた個所を修繕するための材料や、修理できる場所(技術)が提供されることも必要です。そうすることで衣料廃棄物を減らすことが出来ます。消費者の環境意識が高まってきたこともあり、アパレルが自社製品の「お直し」サービスを拡充しています。これはとても有意義なことです。お気に入りの服を大切にし、必要に応じて修繕して、できるだけ長く着用したいと思います。

2023年7月12日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

アパレル各社が相次いで衣料品を自社で修繕するサービスに乗り出す。スポーツ衣料大手、ゴールドウィンは傘下のアウトドア衣料店「ザ・ノース・フェイス」で8月にも、直営店に修繕窓口を初めて常設する。「ユニクロ」などカジュアル衣料でも同様の「お直し」サービスが広がる。衣料品は原材料の調達や生産などでCO2排出量が多く環境負荷が高い。世界的に課題と捉えられており一部で廃棄規制の動きも出ている。修繕サービスなどで対応を急ぐ。”

“日本と韓国のブランド商標権を持つゴールドウィンは、恵比寿ガーデンプレイス(東京・渋谷)内の「ザ・ノース・フェイス・キャンプ」に修繕窓口を設置する。30分ほどで直せる破れやほつれを即日対応する。店内の中心にミシンを置いたガラス張りの専用コーナーを設け、専門スタッフに直接相談したり作業の様子を見られたりする。2026年までに3店舗に設け、将来は全国の店に広げる。ゴールドウィンはこれまでも店頭やサイトでノースフェイスなどの修繕の依頼を受け付け、富山県の自社施設や協力工場に送って直している。2022年度の件数は約2万件と2017年度より6割増えた。スポーツ衣料品「ゴールドウィン」は1月に修繕を無料で受け付ける取り組みも始めた。”

“アメアスポーツジャパン(東京・新宿)もアウトドアブランド「アークテリクス」の直営店に修繕窓口を増やす。2022年10月に国内で初めて設置した東京・丸の内の店舗に加え、9月に開く大阪・心斎橋の新店にも併設する。修繕サービスはこれまで購入後のアフターサービスとして高級ブランドの取り組みが主流だった。しかし、SDGs(持続可能な開発目標)や脱炭素などの考え方が広がり、企業の環境への責任も問われはじめたことでカジュアル衣料にも広がりを見せる。ファーストリテイリングはユニクロで2022年10月、東京・世田谷の店舗に専用の修繕スペースを国内で初めて設けた。スペインの衣料品ブランド「ZARA(ザラ)」も同11月から英国で補修サービスを始めた。”

衣料品は原材料の調達や生産、廃棄による環境負荷が大きい。日本では毎年、供給量の6割にあたる約50万トンを廃棄しているとされる。環境省によると衣類による世界のCO2排出量は2019年推計で約21億トンにのぼる。国内だけでみると、繊維業の生産で出るCO2は建設業の排出量にほぼ匹敵する。(*)衣料品の環境対策は欧州が先行する。欧州連合(EU)は2022年、域内で販売される繊維製品について修繕のしやすいデザインや耐久性などの要件を設けるなどの対策を提言した。北欧のスウェーデンでは2024年1月、衣料品の廃棄やリサイクルまで生産者が責任を負う拡大生産者責任(EPR)法が施行予定だ。フランスでは2022年、企業に売れ残った衣類の廃棄を禁止する法律が施行され、違反者には罰金が科される。日本は食品や家電などに関するリサイクル法はあるが、衣類に特化して廃棄やリサイクルについて定めた法律はない。

“衣料品を直して使い続ける消費行動は広がる可能性がある。消費者庁が2021年度に実施した意識調査では「(衣料品が)傷んでもすぐに捨てずに、お直しやリペアを施して使う」と答えた人は49%と全体の半数にのぼった。”

(*)<欧州が示唆するアパレルの未来>の項を参照

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