号外:COP28開幕へ、温暖化ガス排出減への反転遠く
11月30日からアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)が開催されています。世界の温暖化ガス排出削減はなかなか進まず、排出量はむしろ増加傾向にあります。地球温暖化に歯止めをかけるためには、今回のCOP28で各国が実効性のある対応策を打ち出さなければなりません。下記の記事では会議開催直前に、今回の主要なテーマについてまとめています。
<COP28 at UAE、信頼を取り戻す場に>の項を参照
2023年11月23日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
“世界で異常気象が相次ぎ、地球環境の悪化が続いている。温暖化ガスの排出削減は待ったなしの状況だ。2030年に2010年比45%減らす必要があるにもかかわらず、国連試算では8.8%増える。11月30日に開幕する温暖化防止を議論する国連会議で大幅削減につながる実効策で合意できるかが重要になる。2023年は観測史上最も暑い年となる。南極の氷の面積は過去最少になり、海面上昇ですでに複数の島が水没した。一方で干ばつや熱波などが猛威を振るう。”
“第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで12月12日まで開かれる。温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」の目標に沿って温暖化の被害がこれ以上広がらないよう排出削減などを討議する。「パリ協定にはもう時間の猶予はない」。COP28議長に就くUAEのスルタン・ジャベル産業・先端技術相は訴える。国連によると、2022年の温暖化ガスの排出量は前年比1.2%増え、574億トンと過去最高だった。”
“地球の気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑えるパリ協定の目標の達成にはわずか7年後の2030年に2010年比で45%の削減が必要になる。実際には減るどころか増加傾向が続いている。COP28では各国の排出削減の状況を検証し、不十分ならば改善を促す。国際エネルギー機関(IEA)によると、過去30年で前年比で排出が減ったのは4回だけしかない。ほとんどの都市は世界金融危機や新型コロナウイルス禍といった特殊要因が重なった。主要国は2050年に排出を実質ゼロにする目標などを掲げるが、足元の対応は追い付いていないのが実情だ。国連環境計画(UNEP)はこのままの対応では今世紀末に産業革命からの気温上昇が2.9度に達する恐れがあると警告する。”
“COP28での論点はいくつかある。まずは再生可能エネルギーの拡大だ。UAEは米欧とともに2030年までに再生可能エネルギー容量を現在の3倍、少なくとも110億キロワットに増やすと明記する誓約を、COP28冒頭の首脳会合で採択する方針だ。再生可能エネルギーはウクライナ危機以降、着実に増加した。化石燃料のように特定の国からの輸入に頼らない国産エネルギーとして活用できるからだ。IEAによると、2022年の世界の再生可能エネルギー導入量は最大4億400万キロワットに上った。ウクライナ危機前の2021年の1.4倍の規模にあたる。実現すればパリ協定の目標に向けた一歩になる。”
“もう一つは化石燃料の利用削減だ。再生可能エネルギーが増える一方で化石燃料の消費は減っていない。各国政府がエネルギー価格の高騰を機に大量の補助金を化石燃料に支出しているのが一因といえる。国際通貨基金(IMF)によると、世界各国の化石燃料への補助金は2022年だけで、減税などの間接コストも含めるとおよそ7兆ドル(約1000兆円)と過去最高となった。ウクライナ危機前の2020年比で1.4倍増えた。同危機以降、ロシア産の化石燃料の調達が滞った。世界の政府が国民の生活苦を和らげるためにガソリンの価格上昇を抑える補助金を出した。日本が6兆円を予算措置したガソリン補助金などもその代表例にあたる。国連のグテレス事務総長は「化石燃料への補助金をクリーンエネルギーや雇用対策に回すべきだ」と繰り返し語る。COP28で欧州は化石燃料の段階的廃止を主張する見通しだ。”
“干ばつや洪水、熱波の被害や死者が相次ぐ。最も被害が深刻なのはアフリカや南アジア、太平洋などの脆弱な国々だ。COP28では気象被害を受ける途上国向けの基金の詳細を詰める。反対の少ない再生可能エネルギーの普及に加え、化石燃料の利用を大胆に減らさなければ排出の大幅減は実現できない。いまの取り組みではパリ協定の目標達成にほど遠い。各国が目先の利害を乗り越え、COP28で一致した具体策を打ち出せるかが注視されている。”