ティンバーランド、再生型の革のサプライチェーン構築に取り組む
2020年6月26日付けSustainable Brand Japanに掲載された記事より、
“環境を持続可能にするだけではなく再生させていくことまで考え事業を行おうとする動きがさまざまな業界で生まれようとしている。そんな中、米ティンバーランドは世界の牧草地の大規模な再生に取り組むセイボリー協会と連携し、ファッション業界が再生可能なサプライチェーンをつくることを目指している。”
“セイボリー協会はグッチやサンローランを擁するラグジュアリーファッション界の重鎮ケリング・グループとも提携しており、再生型の調達ソリューションを提唱し、再生型農業をファッション業界のグローバルサプライチェーンにおいて拡大しようとしている。”
“ティンバーランドは、アザー・ハーフ・プロセッシング(Other Half Processing)とも提携している。同組織は、餌には100%牧草を使い、生涯放牧をして牛を育てるサウザンド・ヒルズ・ライフタイム・グレイズド(Thousand Hills Lifetime Grazed、以下THLG)のような農家や牧場種とパートナーシップを結び、再生型でオーガニック、そして持続可能な方法で飼育された動物から皮革やその他の高品質な副産物を調達している。”
“ティンバーランドがこうした新たな提携を行う背景には、親会社VFコーポレーションが昨年、壊滅的なアマゾンの火災の際、ブラジルのサプライヤーとの関係を断ち、革の調達のための厳しい基準を守るという姿勢を示したことがある。同社の目標は、靴やアパレルの再生型サプライチェーンの構築を支援するために、再生型牧場のネットワークをつくり、パートナーである大規模ななめし工場とそれらを連携させていくことだ。”
“これまで環境再生型農業の取り組みは主に食品産業で顕著だったが、サイボリー協会は、アパレル産業と協働することによって、この地球にとってかつてない成功をもたらす機会があると考えている。ティンバーランドはこの分野においてリーダー企業であり、認可された再生型の土地で育てられた革製品を多くの人々に届けることができる。ティンバーランドは今秋、THLGの牧場で生産されたリジェネラティブな革を用いたブーツのコレクションを発表する予定。将来的にはこのプログラムを拡大してゆく。”
ファッションの素材に動物の皮革を使用することの是非については、色々と議論があります。しかし皮革がファッション(靴、アパレル、カバン、小物・雑貨)において歴史のある一般的な素材であることは事実です。FAO(国連食糧農業機関)の資料によれば、穀物や家畜の生産から排出される農業部門の温室効果ガス排出量は2011年で53億トン、全体の17%程度です。ファッション産業からのCO2排出量は全体の10%程度(UNECE:国連欧州委員会2018年発表資料)と言われていますから、ファッション産業からの排出量を上回っています。このような事実を踏まえて、食品業界では「ミートレス(代替肉)」の動きがあり、ファッション業界でも動物素材の使用を控えるエシカルな動きもあります。
詳しくは<号外:仏ダノン、気候変動対策を強化、食品業界に変革の波!>の項を参照ください。
しかし、課題を抱えた現状をただ否定するのではなく、この記事にもあるように、既存のビジネスを再生型の事業として再構築してゆくことは、とても大切なことだと思います。ティンバーランドのようなメーカーと消費者が協力して、SDGsにもある「つくる責任、つかう責任」を理解し、少しでも環境負荷を低減し、持続可能な、さらに再生型の生産・消費スタイルを構築してゆかなければならないのだと思います。