日本環境設計、服から服をつくるリサイクル・プラットフォーム

以前にこのHPでも日本環境設計(株)BRINGというリサイクル・システムについて紹介しました。

フレックスジャパン(長野県)、シャツ回収でリサイクルシャツ製造へ

Share Closet(シェアクローゼット)

無印良品、オーガニックコットンとリサイクル>の項を参照

今回は、2020年11月26日付けでgyoppy.yahoo.co.jpに掲載された記事から、追加参考情報をご紹介します。

日本環境設計株式会社は「BRING」という、服から服をつくるリサイクル・プラットフォームを提供する会社です。BRINGには、パタゴニア、良品計画、The North Faceなど国内外の有名企業が参加しています。

BRINGの仕組み

2007年に、資本金120万円、創業者2名でスタートした小さなベンチャー企業が、今では資本金42億円の企業に成長しました。同社は主に、3つのケミカル・リサイクル技術を開発してきました。

①衣類などの綿製品からバイオエタノールをつくる技術

②携帯電話のプラスティックを熱分解し、再生油をつくる技術

③化学繊維やプラスティック製品からポリエステルを再生する技術

これらの技術を組み合わせることで衣類やプラスティック製品を、再利用して循環させることが可能になりました。衣類に関しては特定の繊維(ポリエステル)を対象にすると、1着の服からほぼ1着の服をつくることができるとしています。

BRINGの技術

廃棄されたプラスティック製品は不純物が多く劣化しているため、リサイクルが難しいと言われていますが、同社の技術はこれまで出来なかったことを一部において可能にしています。しかし、技術力だけでは循環型社会は実現できないと考え、技術力を生かす「リサイクルの仕組み」を構築してきました。

繊維リサイクルに着目した理由について、同社の共同創業者・取締役会長の岩元美智彦氏は、

*起業当初に、消費者へ「一番リサイクルしたいごみは何ですか?」という調査をしたところ、「繊維・衣料品」という回答が一番多かったこと。

*繊維ゴミの多さ。日本では年間、衣類だけで約100万トン、カーテンなどを入れると約200万トンが廃棄されています。家電リサイクル法で処分されている大型家電が年間約60万トンですから、その3倍にもなります。

と説明しています。

起業後、まずコットン(綿)からバイオエタノールをつくる技術を商業化しました。このバイオエタノールを作る技術を活かして、国内初の国産バイオジェット燃料を、JALと共同開発しています。次に開発したのが使用済み携帯電話を熱分解する技術です。プラスティック部分から再生油を製造し、内部の金属率を高めています。2010年から世界最大規模の携帯電話に特化したリサイクル施設を動かしています。

2015年には、衣類などの化学繊維のポリエステルを分解して、石油由来と同じ品質のペレット(ポリエステルの原料)をつくる技術が完成しました。ポリエステル100%の服であれば技術的には、一着の服からほぼ一着の服を作ることができるとしています。まだまだ課題はありますが、製品から製品へ変換できるので、新しく採掘した石油を原料として使う必要がない技術です。この技術ではポリエステルを分子レベルで分解し、不純物を取り除いてから再びつなぎ合わせています。この化学プロセスを経ると物質を劣化させることなく不純物を取り除くことができるため、何度でも製品をつくることができますし、製品から原料に戻し、また製品を作るという循環を繰り返し実現することが可能です。

石油などは「地下資源」と言われていますが、日本環境設計では、役目を終えて使わなくなった製品を「地上資源」と呼んでいます。地上資源を循環させて半永久的に使い続けるために、同社は川崎にある世界最大のペットボトルのケミカル工場を持つ企業を買収しました。ここでは2万2千トンのポリエステルの処理が可能で、2021年夏の稼働を予定しています。

消費者に「どこで回収して欲しいですか?」と聞くと「お店です」との回答が多いため、同社は商品を購入されたお店の店頭に回収ボックスを設置しています。またリサイクルの回収から再生、流通、販売までを回す仕組みを「BRING」と名付けて展開しています。自社のアパレルブランドの他、良品計画やスノーピーク、アダストリアや大丸・松坂屋など、国内の多くの大手企業が参加しています。自社ブランドのBRINGの服には回収キットを付けて、不要な服を入れてポスティングしてもらうと工場へ届くようになっています。ひとつ買うと、ひとつリサイクルする「one buy one Recycle」の関係を作ることを目指しています。

岩元氏は「企業がそれぞれ独自のやり方でリサイクルをしていたら、消費者にとってはわかりにくく不便だし、リサイクルが続かないですよね。だから統一化して多くの企業に「BRING」に参加していただくことがとても重要なんです。」と指摘しています。

また同社は、消費者にリサイクルを「自分ごと」として捉えてもらえるよう、多くの人が参加したくなるような楽しいプロジェクトの企画もサポートしています。その一つが2018年からマクドナルドが実施している遊ばなくなったハッピーセットのプラスティックおもちゃをマクドナルド店舗で回収する「おもちゃのリサイクル」です。2019年度は子供の長期休暇に合わせて年3回実施して、約340万点のおもちゃが集まり、お店のトレーにリサイクルされました。子供たちの間で「使わなくなったハッピーセットのおもちゃはリサイクルする」という文化ができつつあると評価されています。

「95%の人はリサイクルに関心があっても行動するとなると難しい部分もあると思います。『環境は大切だからリサイクルをしよう』という『正しい』話よりも、『楽しい』話の方が人は興味を持ちます。たくさんの人に参加してもらうためには『楽しい』をキーワードに企画を続けることが大切なんです。」(岩元氏)

日本環境設計の特徴は、BRINGという「リサイクルの仕組み」をつくり「リサイクルのプラットフォームを提供する」というビジネスモデルを構築したことです。生活者が参加できるような、経済と環境を両立した循環型社会を創るためには、幅広い製品分野で、「技術、消費者の行動(回収)、小売、メーカー」をつないでいく「ハブ」のような企業、仕組みが求められています。

特に重要なのは、消費者と回収拠点(小売)です。消費者は、環境に配慮した商品Aとそうでない商品Bがあったら、Aを買いたいと思うはずです。そして環境に配慮した商品が売れるとサプライチェーンが変わり、環境にいい商品の製造量が増えます。生産効率があがるので価格を下げられるし、作り続けることで品質が高くなっていく。この循環を作ることが大切なんです。」(同氏)

「重要なのは『大手が同時に』ということなんです。『競合のA社が導入するならうちはしない』というのはよくある話ですが、私たちはひとつの企業のためにやっているんじゃない、地球のためにやっているんです。リサイクルは社会のインフラですから、みんなで協力しないとできません。」(同氏)

「弊社にはない素晴らしい技術を持っている会社はたくさんあります。でも競合という見方ではなく仲間と考えています。循環型社会は一社じゃ絶対にできません、企業も国も連携が大切なんです。」(同氏)

「これからの時代は、環境に配慮する会社がより評価されると思います。最近、カリフォルニアの大手電力会社が大規模な山火事の責任を問われて、その賠償金によって経営破綻しました。フランスでは衣料品を含む売れ残りの廃棄は法律によってできなくなりました。『2030年がSDGsのゴール』とされていますから、メーカー各社が持続可能な事業にどんどん投資して本気になっていると感じます。これから10年間をどう歩むかが大事だと思います。」(同氏)

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