号外:2021年度の日本の温暖化ガス排出量2%増

2020年からのコロナ禍で日本の(世界の)経済活動は停滞し、そのおかげで(?)、温暖化ガスの排出量は減少しました。しかしその後、経済活動が徐々に回復するに従い、排出量も反転しているようです。経済が回復することは結構なことですが、温暖化ガスの排出量を管理・削減していくことも重要です。先のG7気候・エネルギー・環境相会合で確認された目標に向かって、着実に対策を進めていかねばなりません。

G7環境相声明、日本に試練>の項を参照

2023年4月21日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

環境省は4月21日、2021年度の温暖化ガス排出量が2020年度比2%増の11億7000万トンだったと発表した。8年ぶりに前年度を上回った。新型コロナウイルス禍で停滞していた経済活動の回復などでエネルギー消費量が増えた。2030年度の排出を2013年度比で46%減らす政府目標の達成には一段の対応が求められる。”

日本の温暖化ガス排出量推移

“コロナ禍前の2019年度に比べると、2021年度は3.3%減だった。2020年度の排出量はコロナ禍で製造業の活動が停滞し人の移動も減ったことから、1990年度に統計を始めてから最も少ない11億4700万トンだった。2021年度はコロナの影響が和らぎ、排出量が増加した。

森林などの吸収量は2020年度比3.6%増の4760万トンだった。森林整備が進んで4年ぶりに増加した。排出量から吸収量を差し引くと同2%増の11億2200万トンとなった。政府の2030年度目標の起点である2013年度と比較すると20.3%減だった。CO2の部門別の排出量は生産量の回復などで産業部門が2020年度比5.4%増、貨物輸送量が増加した運輸部門が0.8%増となった。行動制限の緩和で外出が増えたことを映し、家庭部門は6.3%減となった。

“主要7ヶ国(G7)気候・エネルギー環境相会合は4月16日にまとめた共同声明に、温暖化ガスの排出量を2035年までに2019年比で60%削減する緊急性が高まっていると明記した。CO2排出量の4割ほどを占める発電部門では、電源構成に占める再生可能エネルギーの割合が0.5ポイント増の20.3%になった。石炭と天然ガス、石油の火力の合計は72.9%となお高く、排出削減の目標達成にはさらなる対策の強化が欠かせない。”

<植木安弘(上智大学教授)の視点>

Earth System Science Dataが4月20日に発表した研究結果によると、アイスランドと南極の氷河が、1992年から2020年までの間に以前の予測よりも急速に溶けており、この期間に21ミリ程度の海水の上昇に寄与しているとしている。別の研究でも、氷河の底が平坦なところは、氷河の溶けるスピードが速いという。南極のスウェイツ氷河が溶け海水に流れ込むと海水の上昇に大きく貢献すると言われており、危惧されている。温暖化ガスの上昇が経済の回復とともに増えているが、この時期にこそ再生可能エネルギーへの転換やEV車の開発と低価格化などに一層の努力が必要になる。

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