ピンチヒッター、九州地区にオフプライス店を展開

このところ「オフプライスストア」という言葉を耳にする機会が増えたように思います。自社および他社から仕入れた余剰在庫を定価より安く販売する業態のことです。「セカンドストリート」を運営する株式会社ゲオホールディングスの「Luck・Rack(ラック・ラック)」や、ワールドとゴードンブラザーズジャパンが合弁で運営する「&Bridge(アンドブリッジ)」がそれに当たります。アメリカではTJ MAXXという年商4兆円近い規模を誇る事業者も存在しています。

売れ残り衣料品在庫の処分、廃棄ゼロを目指して

アパレル余剰在庫削減への取り組み>の項を参照

2021年3月10日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“企業から在庫品などを買い取り、販売をするPinch Hitter Japan(ピンチヒッタージャパン、長崎県諫早市)は小売店事業へ参入した。安く買い取ったブランド品の衣料を割安に販売する「オフプライス」と呼ばれる業態で、これまでインターネットや卸販売してきたが、長崎県内に同社初の実店舗を今月開業した。試着ニーズが高い婦人服や靴を主に取り扱い、2022年4月までに北部九州中心に30店を出店する。”

フックマートの店舗

“展開する店舗名は「フックマート」で、まず長崎県大村市に1号店を開業した。店舗面積は165平方メートル。ワンピースなどの婦人服や雑貨、靴、子供服などを販売する。商品の中心価格は1点1000円以下で、2000円台前半の商品もそろえる。目玉商品として、10円の靴下も用意した。ファミリーを主な顧客層とし、客単価は2000円を見込む。”

“ワンピースなど、ブランド直営店で買えば1万円以上する商品も用意する。こうした業態はオフプライスと呼ばれ、米国では大手が台頭しているほか、国内でも参入が相次いでいる。同社は「中古品でなく未使用の新古品を販売する。最新モデルではないが、在庫となっている商品をアパレルメーカーなどから大量に買い付け、割安な価格を実現している」としている。”

“4月には長崎県川棚町に2号店を開き、同県内で計5店ほどの出展を計画する。福岡県や佐賀県にも出店を広げる。基本的に郊外店舗で20~50台の駐車場を確保する。コンビニや携帯電話販売店の跡地への出展を想定する。同社は2022年3月期の売上高を2021年3月期の2倍の20億円に増やす目標で、このうち10億円前後を実店舗で販売する計画だ。”

“これまでネットや卸販売が主体だったが、婦人服や靴は、顧客から実際に試着してみないと購入の判断ができないとの声が寄せられていた。九州地区では婦人服や靴などを卸しているディスカウント店などもなく、自ら出店しても卸販売先と競合しないと判断した。他社がネット通販することを嫌がるブランドもあり、そうした商品の販路としても店舗を活用していく。”

これまでにもこのHPで取り上げてきましたが、衣料品は「ファッション」ですから、シーズン毎にある程度の売れ残りが出てしまうことは避けられません。しかし近年は、アパレル企業が製品コストを抑えるために過剰に生産し、膨大な余剰在庫を抱え、その在庫をセールと称して安値販売したり、オフプライスストアのような流通経路で消化したり、ひどい場合には在庫廃棄したりということが繰り返されてきました。結果として、アパレル企業の採算は悪化し、厳しい経営状況に直面しています。先ずはアパレル企業が需要に見合った適正な生産を行う努力をし、余剰在庫の発生を極力抑えることが重要です。そのうえで、どうしても発生してしまうシーズン毎の売れ残りを、オフプライスストアを活用して消化するのであれば、製品(資源)の無駄を避けるという意味でも有効だと思います。

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