重要:経産省、リサイクルしやすい衣料で指針

経産省が繊維やアパレル業界向けに環境配慮についての指針をまとめます。さらにその指針を日本産業規格(JIS)に組み入れ(専用マークも検討)、国際標準化機構(ISO)の標準規格にすることを目指します。詳細は下記に記載していますが、私が個人的に注目しているのは、「植物由来の素材」「リサイクルしやすい設計」「修繕サービス」の3点です。特に「植物由来の素材」は、繊維製品の脱炭素を促進するためのキーポイントだと考えています。植物由来の繊維素材といえば、すぐに思いつくのはコットン、レーヨンやアセテートといったセルロース繊維ですが、これらの素材は地球環境保全(生態系や森林の保護)と、増加する世界人口に対応した水と食糧の確保を考えると、今後大幅に増産することは難しそうです。では、それ以外の「植物由来の素材」としては何が考えられるでしょうか。世界中で最も使用されている繊維素材はポリエステルです(世界繊維生産量の6割弱)。ポリエステルは石油由来のエチレングリコール(EG、約30%)とテレフタル酸(PTA、約70%)を重合して製造されるプラスチック(PET)を繊維化したものです。2つの粗原料のうち、EGについてはサトウキビなどから製造されるバイオエタノールからの合成が可能で、バイオエタノールはすでに量産化されています(代替燃料用途がメイン)。もうひとつのPTAについても植物原料から製造することは技術的(化学的)には可能なようですが、難易度が高く、量産化には至っていません。現時点で石油由来の合成繊維の代替素材となる100%植物由来の繊維としては、PLA(ポリ乳酸、植物由来プラスチック)を繊維化したものが最も可能性があるように思われます。PLAはすでに量産化されていますが、従来のPLA繊維は、衣料用途として耐久性や耐熱性、染色性が十分ではなく、使い勝手の悪い素材でした。しかし近年ではPLA改質技術が格段に向上し、衣料用途としての本格的な開発が進められています。100%植物由来のPLA繊維は生分解性も備えていて、回収・処理の仕組みを整えれば、廃棄段階での環境負荷低減にも貢献することができます。またケミカルリサイクルによって「繊維 to 繊維」の循環も可能です。

欧州が示唆するアパレルの未来

繊維・ファッション産業の再構築、「新しい素材」の可能性(私見)

経産省、衣料品再生でルール策定へ>の項を参照

2024年3月27日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

経済産業省は繊維やアパレル業界向けに環境配慮の指針を初めてまとめる。リサイクルしやすい衣料品の設計や再生繊維の活用といった11項目を示す。欧州連合(EU)は再生可能な素材を使わない製品を市場から排除する方針で、影響は世界に広がっている。ファーストリテイリングから中小企業まで幅広い事業者に対応を促す。具体的には①植物由来の素材や再生繊維を使用②製造時のCO2排出を抑制③ボタンやファスナー素材の統一などリサイクルしやすい設計④購入者が受けやすい修繕サービス、といった項目を挙げる。”

“経産省が近く公表する。東レや帝人など繊維事業者や、ファストリや三陽商会といったアパレルが対象になる。製造から流通・消費までの過程で守るべき項目を定めるほか、事業者に指針に沿った事業計画をつくって生産・販売するよう求める。指針に合致する製品であることが一目で分かるような専用マークも検討する。経産省は同指針を2026年度までに国の統一規格である日本産業規格(JIS)にする。国内外に環境配慮をより客観的に示すためで、2027年度以降は国際標準化機構(ISO)の標準規格にすることを目指す。”

「ファストファッション」に代表されるように、大量に生産して廃棄することに、環境負荷の高さが指摘されてきた。EUは2030年までに域内で販売する製品に再生繊維を多く使い、リサイクルしやすい設計にすることを要求する見通しだ。守れなければ日本企業も市場から締め出される恐れがある。経産省は新たな指針をISOの規格にできればEU側も日本製の繊維製品を受け入れやすいとみて対応を急ぐ。”

“欧州のアパレルブランドによる自主的な取り組みも進む。スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)や米パタゴニアは今後、自社の全製品を再生繊維などに切り替える。一部のブランドは使用する繊維企業に、環境配慮を示す民間認証の取得を要請する。民間認証には例えば化学物質を使わない製品を認証する「GOTS」などがある。水汚染やリサイクルなど課題別にそれぞれ認証制度があり、1つの繊維製品でも複数の認証を得る必要が生じやすい。

“経産相によると「日本の中小事業者には認証取得の手続きや金銭負担による『認証疲れ』が起きている」という。経産省は新たな指針に関し、リサイクルやCO2削減など網羅的なISOにすることで、複数の民間認証を取得しなくても環境への配慮を証明できる制度にする狙いがある。日本は伸縮性のある高機能繊維などに強いものの、近年は事業者数や輸出額が減っている。日本繊維輸出組合によると2023年の輸出額はおよそ69億ドル(当時9700億円)で2年連続で減少した。経産省は指針や規格づくりで国内事業者の経営や海外展開を支える。

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